~黒牛とメノコ~創作絵本
ある夏の日の昼のこと
くろうしの背に乗り、ゆられゆられて、
売られてゆくのか一人のメノコ
空をあおいでメノコは思う
村よ田んぼよさようなら
こうして売られてゆくのなら
おらはあのトンビになって空を自由に飛んでいたい
いっそ一匹の魚になってこの川で自由にあそんでいたい
大きな大きな川をわたっていく黒牛とめのこ
ぽちゃん ぽちゃん ぽちゃん
メノコのこぼした涙は大河の流れの一滴となる
はっと人買いの男がうしろを振り向くと
メノコの姿はもう消えていた
あとには物言わぬくろうしがじっと立っており
川の流れるはげしい音がいつまでもどこまでも
続いているのだった
絵、文 弘中香織
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